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小倉簡易裁判所 昭和60年(ハ)2435号 判決 1986年7月08日

原告

株式会社セントラルファイナンス西日本

右代表者代表取締役

石橋達

右訴訟代理人

柴田浩明

被告

新屋恵

新屋千代司

右被告両名の訴訟代理人弁護士

住田定夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し連帯して金二九万七、三三四円及びこれに対する昭和六〇年二月二六日から支払ずみまで年二九・二パーセントの割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  主文と同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  別紙のとおり

二  請求原因に対する認否

(被告 新屋 恵)

1  請求原因一の事実は認める。

2  同三の事実は知らない。

3  同四の事実は認める。

(被告 新屋千代司)

4  同一の事実は不知

5  同二の事実は否認

6  同三、四の事実はいずれも知らない。

三  抗弁

(被告 新屋 恵)

1  本件立替払契約は、訴外川上ビューティアカデミー学院こと川上澄子(以下訴外人という)と被告新屋恵との間の美顔コース役務提供契約の代金の立替払契約であつたところ、同訴外人は小倉校で役務提供をなすとの約定に反し、同校を無断で昭和六〇年二月閉鎖してしまつた。そのため被告新屋恵は通学出来なくなつたので右訴外人に対し、同年同月二三日頃到達の書面で契約解除の意思表示をした。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁事実は否認する。

美顔コースは実習期間が三ケ月であるので閉鎖までに終了出来た筈である。かように本件は被告の責に帰すべき事由で役務提供不能となつたものであるから、契約解除は原告に対抗出来ない。

第三  証拠<省略>

理由

(被告 新屋 恵)

一請求原因について

1  請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

2  請求原因三の事実は、<証拠>を総合すれば認めることができる。

3  請求原因四の事実は当事者間に争いがない。

二抗弁について

<証拠>を総合すると、被告新屋恵は、昭和五九年九月六日、北九州市小倉北区所在の訴外川上ビューティアカデミー学院(以下訴外人という)の指導士コース(実習期間一年)、美顔コース(二〇回実習コース三ケ月)に入学したが、その手続をするに際し、被告の住所(門司区)、勤務地(小倉北区)、勤務時間等の関係から小倉校でしか受講することが出来ないということでそのことを訴外人担当者との間で確認したこと、更に美顔コースは規定上実習期間が三ケ月になつているが、指導士コースと並行して受けると規定の期間内に二〇回終えることは時間的に困難であつたため、これについても訴外人の担当者(大倉、中村)と相談の上美顔コースも指導士コースと同様一年で終われば良いとの合意が出来たため、入学することとしたこと、小倉校は昭和六〇年二月一日訴外人側丈の都合で閉鎖され、訴外人は小倉校の受講生に対し黒崎校、天神校に通う様勧めたが、被告にとつては黒崎校に通うことは時間的、地理的に困難であり、ましてや天神校に通うことは不可能の状態であつたこと、被告は小倉校閉鎖までに美顔コースは四回受けていたが、同コースは二〇回の役務提供を受けることにより美顔を完成させる目的のもので四回で打ち切られると全く目的を達しえないものであること、被告は母と共に解約申込の目的で天神校を訪れ学院長と会つたがそこでも学院長から天神校へ通うことを勧められたものの結局話し合いは未解決のまま終つたので、被告はあらためて昭和六〇年二月二八日頃到達の内容証明郵便で訴外人に契約解除の意思表示をしたこと、被告は原告に対し、本件立替金中二万一、四〇〇円を支払つたが小倉校閉鎖により送金を中止したこと、の各事実が認められる。<証拠>中、右認定に反する部分は採用出来ない。以上の事実を総合すると、訴外人の被告に対する役務提供が不能になつたのは訴外人側の責に帰すべき事由によるものと認めることが出来るので、契約解除の事実は原告に対抗しうると解する。

よつて抗弁は理由がある。

(被告 新屋千代司)

三請求原因について

1  請求原因1の事実は被告本人新屋恵の尋問結果(一回)により認めることができる。

2  請求原因2の事実について

<証拠>を総合すると、被告新屋恵は本件金銭消費貸借契約書(甲第一号証)作成に際して、連帯保証人が必要と言われて連帯保証人欄に父である被告新屋千代司の氏名を書いたが、それは新屋恵が独断でやつたことで被告新屋千代司の承諾は事前事後とも全くとつていなかつたこと、従つて新屋千代司はそれを全く知らなかつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。又原告会社から被告新屋千代司に対し連帯保証人の意思確認をしたかどうかについてもこれを認めるに足りる証拠がない。

よつて請求原因事実は認められない。

3  従つて、被告新屋千代司に対する請求はその余の事実につき判断するまでもなく失当である。

四結論

以上の事実によれば、本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官宇都宮 靖)

請求原因

1 被告新屋 恵は、(一)の買受けをするに際し、原告との間で昭和五九年九月一一日(二)の契約を結んだ。

(一) 買受年月日 昭和五九年九月一一日

売主 訴外株式会社川上ビューティアカデミー学院

商品 美顔コース

代金 三〇万〇、〇〇〇円

(二) 原告は、売主に右代金を立替払する。

買主は、右立替金と取扱手数料金七万五、〇〇〇円との合計額を次のとおり分割して支払う。

昭和五九年一一月から同六二年一〇月まで毎月六日限り金一万〇、四〇〇円宛(但し初回は一万一、〇〇〇円)

右賦払金の支払を怠り、原告が二〇日以上の期間を定めた書面で催告しても支払わないときは、期限の利益を失う。

遅延損害金年二九・二パーセント

2 被告新屋千代司は、前同日原告に対し、買主の右債務につき連帯保証をした。

3 原告は、売主に対して右代金額を立替払した。

4 原告は、買主が1項の(二)の賦払金の支払を怠つたので、同人らに対し昭和六〇年二月五日到達の書面で、遅滞した賦払金を同六〇年二月二五日までに支払うよう催告した。

5 よつて、原告は被告らに対し、連帯して右立替金等残金二九万七、三三四円とこれに対する失期後である昭和六〇年二月二六日から支払ずみまで約定の割合による遅延損害金の支払を求める。

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